2015年10月31日土曜日

『一九三七年秋、スワンポイント墓地』解説(竹岡啓)

 以下、『クトゥルフ神話掌編集 2015』に掲載されている『奇異の獄』を御覧頂いた方だけがお読みください。
 
 
 『一九三七年秋、スワンポイント墓地』解説(竹岡啓)
 
・ヘルマン・ミュルダー教授
 
 ラヴクラフトとウィリス・コノヴァーの文通で語られている人物。一九三七年の時点で存命だった。ドイツのハイデルベルクに住んでいたが、ナチス政権下では国を追われることになるだろうとラヴクラフトは述べている。
 ラヴクラフトとコノヴァーの文通の断片から、ゴットフリート・ミュルダーなる人物をリン・カーターが創造している。こちらはフリードリヒ・フォン・ユンツトの同時代人で、一八五八年にメッツェンガーシュタインの精神病院で死去したという設定だが、拙稿ではゴットフリートをヘルマンの祖父ということにした。
 
 
・あの神は執念深い
 
 ヨグ=ソトースのこと。ミュルダー教授が研究の成果を発表しようとしていることに対し、ラヴクラフトは一九三七年一月一〇日付のコノヴァー宛書簡でこのように述べて懸念を表明している。
 
 
・フォン・ユンツト
 
 喉を切って自殺したフォン・ユンツトは『無名祭祀書』の著者の曾孫に当たる。ラヴクラフトが一九三二年一月二八日に書いたダーレス宛の書簡で彼のことが述べられている。
 
 
・ハート型の白い小石
 
 ラヴクラフトと親交があったミュリエル・E・エディの回想による。ラヴクラフトの死から七カ月後、彼の墓を夢に見たエディ夫人がスワンポイント墓地に駆けつけると、ハート型の白い小石が見つかったという。